草間彌生さん追悼

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草間弥生さんが亡くなった。享年97才。日本の現代美術を代表する作家の一人であり、最後まで現役を貫いたアーチスト。その作品は、国境を越え、世代を超え、さらには小さな現代アート愛好者のサークルを超えて、世界中の人々から愛された。特に生きづらさを抱えた多くの女性たちが、彼女の作品と生き方に出会って励まされ、力づけられ、生の可能性を再認識することができた。

彼女はアーチストとしてだけではなく、作家として、詩人としても活動した。その作風も初期の暗い色調を帯びた作品、ニューヨーク時代の膨大な点や男根が繁殖する作品、あるいは過激なストリートパフォーマンスやビデオアート、帰国後の一転したカラフルでポップなオブジェと版画、空間全体を無限の光の世界に変えるインスタレーション、そして後期の過剰なまでに顔や生命体が描き込まれた壁画に至るまで、変幻自在だった。にもかかわらず、どのスタイルでもそこには紛れもなく草間彌生の存在が刻印されていた。その意味でも、凄い人だったと思う。

とりあえず、手元にあるカタログから彼女の言葉を引用しておく。昨年、京セラ美術館で開催された「草間彌生 版画の世界ー反復と増殖」に掲載されている「この不思議」という詩だ。草間彌生という存在の底知れなさが感じられる言葉だと思う。

次々と溢れ出てくる私の想像力は、雨の日も、晴れた日も、雪の日も、
私にはどうしてこうたくさんの生き様が途切れもなく続くのだろうか。
その不思議について私自身答える術を見失った。
山はますます高く、空は限りなく青々としているではないか。
この宇宙の中で私は決して一人ぼっちではない。
私の芸術の求心は遙かに私をこえて雲のように地球中を取り囲んでいる。
今日も静かだ。
私の愛が燃え尽きないように、すべての人々の愛情を受け止めたい。
愛こそとこしえ。
そう心に決めて、ふと泉の淵に走りゆけば
どこまでも深く青く澄んで、私の心を打つ。
生きてゆく事ってどういう事なのか。芸術を造るたびに考え込んでしまう。
そして手を握りしめて心の虚しさを取り壊して私はもっと人生の高みに登りつきたいのに。
なんというすべての不思議。
私の知っている事は、もっともっとただただ走り抜く事なのだ。
このすべての不思議を捨て去って!
さようなら私の不思議たち。

もう一つ。これも同じカタログからの彼女のメッセージ。タイトルは「戦いのあとで 宇宙の果てで死にたい。」。彼女の宇宙的なビジョンが感じられる言葉だと思う。

すべての人々に愛はとこしえと叫び続けてきたわたし
そしていつも生きることに悩みつづけ
芸術の求道の旗をふりつづけてきた。
生まれいでてからこのかたそして
今迄走りつづけてきたのだった。
世界という檜舞台でのいくたびかの
昨日の衣を常に新しい衣に脱皮しながら
膨大な作品群を造り続けてきた
このわたしの「道程」は、真夜中の灯りの下で
ねむれぬ幾夜中のしじまに励ましてくれる
そしてもっともっと愛を世に叫び刻印を残したい。
世界の争いや戦争やテロや貧富の泥沼をのりこえることを
心から願って止まない。
人々が平和でくらせるようにと
わたしの願いはつきることもない。
芸術の力をもって斗っていきたいのだ
芸術の心のかぎりの求道のいしずえをもって
人々に仕え社会に貢献したい。
そのゆきつく先は、わたしはやがて老いて
宇宙の広々とした天国の階段をのぼりつめて
白雲が静かにつづくしとねで
わたしは自我をはなれ
深々とした青い空のしとねで、
ゆったりとねむりづけるだろう。
そして地球にサヨナラを伝えるのだ。

心から追悼の意を表します。安らかにお眠りください。

草間彌生(1970)「無題」
(アメリカから帰国した際の草間彌生の自画像と言われている)

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