「大浮世絵展」@江戸東京博物館
終了間際の「大浮世絵展」に駆け込み。2ヶ月で10万人突破とのことで、場内は大混雑でした。浮世絵は小さいから、結構見るのが大変。
今回は、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳という大メジャーな浮世絵師たちの作品をまとめて見ることができるというのが売りです。北斎であれば富嶽八景シリーズや諸國瀧巡シリーズ、広重であれば東海道五十三次や名所江戸百景シリーズ、写楽であれば大首絵シリーズと定番の作品が中心なのであまり発見はありませんが、こういう傑作をなかなかまとめて見る機会はないので、お得な展覧会だと言えるでしょう。
特に、歌麿と写楽は、ほとんど海外の美術館所蔵のものが出されているので保存状態も良く、摺の色彩も鮮やかで堪能できます。今更ながら、よくぞ幕末〜明治維新の混乱期にきちんと収集して保存してくれたと感謝です。明治維新で「文明開化」に邁進する日本政府と日本人が、浮世絵のような旧時代の産物の重要性を顧みなかった中、せっせと浮世絵を収集し、しかもきちんと美術館に寄託・寄贈してくれた西洋人がいなければ、私たちはこんなに保存状態の良い作品を見ることができないんですよね。
個人的にも、北斎・広重の凄さを認識したのは、海外の美術館でHokusai、 Hiroshigeのカタログが大きく平積みされているのを手に取ってからでした。この二人は、浮世絵師とか日本美術史とかを超えた世界美術史における巨星だと思います。北斎の斬新な構図や色彩感覚、あるいは広重のあっと驚くフレーミングには、近代的な美意識を感じるし、実際、多くのヨーロッパの画家たちが、こうした手法に影響を受けました。
近代美術、現代美術を経た後で、こういう形で浮世絵のスーパースターの作品を見直していると、江戸時代の美意識とか感性とか、あるいは文化的洗練に改めて感動します。私の頃の教育システムでは、「江戸時代=封建的支配=前近代的精神」という図式がまずあって、すべての文化や価値が、「ヨーロッパ的近代」から一方的に劣ったものとみなすというものでした。でも、これだけの作品が大量に生産されたということは、それを享受し、消費するコミュニティが存在したということですよね。パトロンも当然いたわけです。いやはや、江戸時代が羨ましい。。。