サイモン・ウェスト監督「コン・エアー」

BSシネマの路線としては珍しい売れ線のアクション映画「コン・エアー」が放映された。地味な作品ばかり放映していると視聴率が下がるので担当者がプレッシャーを感じたのだろうか。とはいえ、この選択は悪くない。超売れっ子プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー製作の元、これがデビュー作となるサイモン・ウェスト監督が手堅く仕上げている。何より、ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック、ジョン・マルコヴィッチという芸達者の男優を揃え、さらに「コン・エアー(囚人護送機)」の名にふさわしく、見るからに犯罪者という面々が脇を固めていて壮観である。中でも、連続殺人犯ガーランド・グリーン役のスティーヴ・ブシェミが圧倒的な存在感を放っている。1997年の作品だけど、90年代ハリウッド・アクション映画の勢いを感じさせる作品。

余談だけど、BSシネマの今月のラインナップにはさりげなく「スターリンの葬送狂騒曲」が入っているが、これはスティーヴ・ブシェミの主演作。普通の人には気づかないけれどもスティーヴ・ブシェミという独特の性格俳優つながりで今月のラインナップを作ってみようということなんだろう。このあたりの小技がBSシネマの面白いところ。正直、どんな人がプロデューサーをやっているのか、とても興味があります。よほどの映画好きでないとこういう芸当は出来ない。毎月の編成の苦労と楽しみ、さらに公共放送でのポリティックスとか裏話が聞けるときっと面白いだろうな。。。。

物語はあえて紹介するまでもないだろう。元レンジャー隊員のキャメロン・ポー(=ニコラス・ケイジ)は、軍を除隊してようやく妻の元に戻れたのも束の間、からんできた酔っ払いについ反撃して相手を殺してしまう。第一級殺人罪で服役したポーは、妻とまだ見ぬ娘との再会だけを願いながら模範囚としての日々を過ごすのだった。そしてようやく仮釈放のチャンスが巡ってくる。しかし、彼が搭乗した「コン・エアー」には、史上最悪の凶悪犯が顔を連ねていた。そのひとり、天才的な凶悪犯のサイラス・グリサム(=ジョン・マルコヴィッチ)は、麻薬カルテル御曹司の脱獄計画を練り、「コン・エアー」をハイジャックしてしまう。正義感から、サイラス達との戦いを始めるポー。連絡手段がない中で、彼は機内の情報を地上に伝えようとする。連邦保安官のヴィンス・ラーキン(=ジョン・キューザック)は、ポーのメッセージを察知し、地上からハイ・ジャック奪還に向けて奔走する。。。。

ジェリー・ブラッカイマー製作にふさわしく、派手なアクション、キャラの立った悪党達、息もつかせぬ展開が続いて飽きさせない。そして、もちろん細部の遊び心。例えば、ヴィンス・ラーキンと共に対応に当たる麻薬取締局捜査官のダンカン・マロイ。派手なオープン・カーで空港に乗り付け、いきなり障害者優先の駐車スペースに車を止める登場シーンから存在感を見せつける。彼は、ハイ・ジャック情報を知るとただちに攻撃ヘリを調達してコン・エアーを打ち落とそうとするクレイジーな男だ。しかも、最後は、彼のオープン・カーがなぜかコン・エアーと共に浮上しそのまま落下して大破してしまう。こういう、憎々しい敵役だけどどこか憎めないキャラがいるだけで映画が盛り上がる。やはりエンターテイメントのツボを心得ている。

正義感の強いポーが仲間を救い家族の元に帰還する物語を軸に据えながら、そこに様々なエピソードを加えていくことで物語を豊かにしていくバランス感覚。最後まで飽きさせない良質のエンタメ映画でした。

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