「根津美術館の国宝・重要文化財」展
表参道に行く用があったので、久しぶりに根津美術館へ。財団設立80周年記念特別展として開催中の「根津美術館の国宝・重要文化財」展を見る。さすがは根津美術館。6つの部屋に展示されているすべての作品が国宝または重要文化財である。同美術館は、国宝7点、重要文化財88点を所蔵する貴重なコレクション。創設者の根津嘉一郎の鑑識眼の確かさに改めて頭が下がる。
今回の展覧会は、会期を三期にわけ、それぞれに見所を分散させている。できれば鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」と尾形光琳の「燕子花図屏風」もあわせてみたかったけど、今回は円山応挙の「藤花図屏風」だけで我慢する。この作品は、今回始めてみたけれど、卓抜した空間感覚に魅了される。大きく真ん中に余白を取り、両サイドに藤の花を配する独特の空間構成。しかも、藤の木は重力を無視するかのように屏風の上をのたくっている。この浮遊感がとても斬新である。しかも、近づいてみると藤木の幹には微妙に苔が生えており、また藤の花一枚一枚が丁寧に描かれていて光彩を放っている。贅沢な絵だと思う。琳派の美意識が、国際的に再認識されていることも納得できる。
同じ琳派で言うと、尾形乾山の銹絵染付金彩絵替土器皿も目を引く。土器の皿5枚に乾山が絵を描いただけの作品だけど、抽象的でシンプルな線と色だけで、川や風や海を表現するデザイン・センスはとてもモダン。やぼったい土器の皿が洗練された食器に変貌するのは本当にスリリングである。やはり琳派は面白い。
南宋画の巨匠、牧谿や夏珪のありがたみも分からなければ、書や仏画・仏像の良さもきちんと理解できない無教養の人間だから、根津美術館の有り難さを十分に分かっているとはとても言えないけれど、なかなか楽しい展覧会でした。出来れば、もう少し明るい場所で見てみたい。作品保全のために照明を落としているので、ただでさえくすんでいる仏画や花鳥画がさらに見づらくなってました。ただ、やはり殷時代から、西周、春秋、戦国時代にかけての青銅器コレクションはいつ見ても見応えがあります。呪術的なパワーを感じるというのでしょうか。。。おかげで、すっかりと精気を取られてしまったようで帰宅したら疲れ果てていました。。。