渡辺京二著「私の世界文学案内ー物語の隠れた小径へー」

例によって本屋をぶらついていたら、たまたま目についたので、渡辺京二著「私の世界文学案内ー物語の隠れた小径へー」を購入。僕は渡辺京二さんのお仕事は全く知らない。彼の名前は、ひとえに石牟礼道子さんの盟友としてずっと彼女に寄り添っていたということで知っているだけ。思想家として、日本近代史や近代思想、文学などについて多数の著書を出しておられることを、この本を通じて初めて知った。熊本県を拠点に活動しておられたのですね。

本書は、1982年に日本エディタースクール出版部から刊行された「案内 世界の文学」を底本とする。執筆当時は、看護学校の学生向けの雑誌に連載されていたということで、読みやすい。理論を大上段に振りかざすのではなく、作品世界に寄り添いながら人生を生きていく上での洞察を語っていくような感じ。でも、きちんと個々の作品を文学史的に位置づけ、単なる人生論に堕することなく文学としての魅力も語る。もちろん、作品の大まかな世界観やあらすじを紹介することも忘れない。さすが、週刊読書人の編集者だっただけのことはありました。

父が思春期の娘に文学の魅力について語る手紙という形式を取っているので、最初は娘に語りかける感じがとってつけたようでちょっと気になったけど、読みやすいし、内容も充実しているし、良い本でした。だからこそ、80年代の作品が文庫として復活し、版を重ねているのでしょう。再び文学を読もうという意欲が湧いてくる良い本でした。

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