読書

吉田秀和著「グレン・グールド」

吉田秀和著「グレン・グールド」

2020年2月8日
吉田秀和さんの本は全く古さを感じさせない。もちろん、扱っている作曲家や演奏家は昭和に活躍した人たちだから、情報自体は古い。でも、吉田さんの音楽への向き合い方がとても真摯だから、時代を超えて音楽の本質に迫る迫力を持っている。楽譜も読めない僕など、あまり良い読者とは思えないけ…
ミシェル・ウェルベック著「素粒子」

ミシェル・ウェルベック著「素粒子」

2020年2月4日
またまたミシェル・ウェルベック読了。今度は、「素粒子」。 野崎歓さんの訳が素晴らしい。ウェルベックを読むなら、本当はこの本から始めるべきだったんだろう。「闘争領域の拡大」が注目を集めたとは言え、ウェルベックが国際的な流行作家になったのはこの素粒子からだし、野崎歓さんの翻訳…
モーリス・ブランショ「明かしえぬ共同体」

モーリス・ブランショ「明かしえぬ共同体」

2020年1月28日
諏訪敦彦監督の新作「風の電話」公開を記念して、某大型書店で諏訪監督推薦図書コーナーが開設されていたのに遭遇し、つい「明かしえぬ共同体」を衝動買いしてしまった。同時に購入したのが、諏訪監督の「誰も必要としていないかもしれない、映画の可能性のために」と、エマニュエル・レヴィナ…
多和田葉子「百年の散歩」

多和田葉子「百年の散歩」

2020年1月22日
気になっていた多和田葉子さんの「百年の散歩」が文庫になったので、早速、購入。多和田葉子さんの作品は、「犬婿入り」から「ヒナギクのお茶の場合」「容疑者の夜行列車」「光とゼラチンのライプッヒ」「球形時間」くらいまで追っかけたんだけど、その後、しばらく挫折していた。理由は、単純…
レイモンド・チャンドラー著「水底の女」

レイモンド・チャンドラー著「水底の女」

2020年1月20日
村上春樹のレイモンド・チャンドラー新訳シリーズ完結版読了。 思い返せば、2007年の「ロング・グッドバイ」村上春樹新訳は衝撃的だった。清水訳に親しんでいた僕は、繊細な情景描写と、私立探偵風情には不似合いな文学的素養をのぞかせる新鮮なフィリップ・マーロウ像に魅せられた。村上…
川上未映子著「乳と卵」

川上未映子著「乳と卵」

2020年1月15日
年末に、川上未映子による村上春樹へのインタビュー集「みみずくは黄昏に飛び立つ」を読んだ。村上春樹のインタビューや創作に関するエッセイは基本的につまらない。理由は単純で、村上春樹は文学についての言及を周到に避け、常に「方法論」だけを語ろうとするからである。話すことがないのか…
前田英樹著「小津安二郎の喜び」

前田英樹著「小津安二郎の喜び」

2020年1月14日
前田英樹の「小津安二郎の喜び」読了。彼が1996年に出した「映画=イマージュの秘蹟」を最近、ようやく読んでとても気に入ったので、2016年刊行の本書を購入。こちらも良い本だと思う。 前田英樹の出発点は、いうまでもなくドゥルーズの「シネマ」の枠組みにある。ドゥルーズによれば…
ミシェル・ウェルベック著「プラットフォーム」

ミシェル・ウェルベック著「プラットフォーム」

2020年1月5日
去年から、ミッショル・ウェルベックにハマっている。最初に読んだのが、イスラム政権フランス誕生という設定で物議をかもした「服従」。続いて、「闘争領域の拡大」「ある島の可能性」と読み継いできて、「プラットフォーム」で4作目になる。 本書のテーマは、タイを舞台にしたセックス・ツ…
ジョン・ヒック著「宗教の哲学」

ジョン・ヒック著「宗教の哲学」

2020年1月4日
キリスト教の「神」という観念には以前から興味がある。八百万の神々が棲まう日本人にはなかなか理解し難いけれど、唯一絶対の神、世界の創造神であり永遠・全能の存在という考え方は、とても興味深い。 例えば、「神は存在するか」という命題を考えてみる。信仰の対象となっているのだから、…