ケン・アナキン他監督「史上最大の作戦」

BSで「史上最大の作戦」を見る。ケン・アナキンなど3人が手分けして監督した1962年の作品。製作はダリル・F・ザナック。20世紀フォックスの設立者で副代表でもあったザナックの力業を感じさせる。20世紀フォックスは、「クレオパトラ」の膨大な赤字で危機に陥った財政をこの映画の大ヒットで回復させた。アカデミー賞の撮影賞、特殊効果賞、ゴールデン・グローブ賞の撮影賞を受賞。

物語は、第二次世界大戦における連合軍のノルマンディー上陸作戦を描く。原題の「The Longest Day(もっとも長かった一日)」のとおり、その上陸作戦の長い一日を中心に描いていく。もちろん、ノルマンディー上陸作戦では、単に上陸するだけでなく、後方攪乱のためにプラシュート部隊がフランス各地に展開し、レジスタンスと協力して破壊活動を行ったり、上陸後速やかに部隊が侵攻できるように要所要所の橋を確保したりという作戦を行った。映画は、こうした様々な作戦とこれに関わる人間模様を描く。

そしてもちろん、ドイツ側の反応もきちんと描いていく。ドイツ側は、たったひとりを除いてすべての大将が、連合軍の上陸作戦があるとしてもそれは英仏海峡がもっとも狭まっているカレー付近だろうし、また悪天候の6月ではなく天候が良好な7月以降だろうと予測していた。諜報部が英国からの暗号を解読して作戦を予知したにもかかわらず上層部はその情報を受け入れなかったためにドイツ側は大混乱に陥り、連合軍の上陸を許すことになる。歴史が伝えるとおり、この作戦は第二次世界大戦の転機となった。

この映画はまたオール・スターのキャストでも有名である。ジョン・ウェイン、ロバート・ライアン、ロバート・ミッチャム、ヘンリー・フォンダ、ショーン・コネリ、クルト・ユルゲンス・・・・。それぞれ一本の映画で軽く主役を張れるスター達が勢揃いしたという点でも画期的な映画だった。スタッフは、さぞかし苦労しただろうな・・・と思う。男優だからなんとかなっただろうけど、女優では多分無理だったでしょう。

今回、改めて見直して、この映画が持つ反戦メッセージに気づいた。パラシュート部隊の一つが誤ってドイツ軍が占領している街の広場に降下してしまい、無差別銃撃を浴びてほぼ壊滅状態に陥る。その殺戮の場面を映画は無慈悲に映し出していく。それは、上陸作戦でも同様である。そこら中に地雷が仕掛けられ、身を隠す場所もない砂浜に上陸した兵士達は、不意を突かれたとは言えトーチカと機関銃の重装備で防御するドイツ軍の銃撃で次々と命を落としていく。史上最大の作戦は、決して戦意高揚の映画ではなく、人間の愚かさと戦争の悲惨さを描いた作品である。

それにしても、上陸部隊を空撮で延々と捉えた映像、炸裂する砲弾、あるいはビルに立てこもった敵への戦車砲撃など、その実写の迫力には圧倒される。こうなると、演出とか演技とか言うよりもほとんど土木工事と特殊効果の世界。アカデミー賞の撮影賞と特殊効果賞を受賞したというのも理解できるような気がする。監督が3人で、各国別々に撮っているのでつじつまが合わない部分もあるし落ちがついていない部分も多々ある(ヘンリー・フォンダ分するセオドア・ルーズベルト・ジュニアは、果たして無事上陸作戦を成功させたのだろうか。。。)。でも、そんな細部など気にならないぐらいの圧倒的な爆薬と兵士、そして破壊・・・。それだけで、長い一日が実感できてしまう。

余談だけど、ジョン・ウェイン扮するバンダーボルト中佐が良い味を出していました。空挺師団を率いて後方攪乱のためにパラシュート降下したけれど、恐れていたとおり部隊の一部は街の広場に降下してほぼ全滅し、残りは遠く離れた沼地に降下して部隊はバラバラになってしまう。中佐自身も降下の際に足を折ってしまう。それでも中佐は、散り散りになった兵士を集めて部隊を立て直し、自身は荷車に乗って街へと向かう。街に到着した中佐が最初に出す指示は、パラシュート降下の際に撃たれまま樹木や家から宙づりの状態になっている死んだ兵士達を降ろしてやれというものだった。人情味あふれる将校役をいつも通りジョン・ウェインが演じている。荷車に乗った姿はどう見ても西部劇。やはり役者の格が違うなと思いました。。。。機会があれば、映画館の大画面でもう一度見てみたい作品。

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