セシル.B. デミル監督「地上最大のショウ」

BSシネマで録画しておいたセシル・B・デミルの「地上最大のショウ」を観る。1952年の作品。出演は、ベティ・ハットン、コーネル・ワイルド、チャールストン・ヘストン、ジェームズ・スチュワートなどの豪華メンバー。アカデミー賞の作品賞と原案賞を受賞している。

20世紀映画史における巨匠であり、もっとも成功したプロデューサーの1人でもあるセシル・B・デミル。この映画は、彼が遺作となる「十戒」の前に監督・製作した、最後から2番目の作品。サーカスを舞台に、総監督のブラッド・ブレイデン(=チャールストン・ヘストン)、ブラッドの恋人で空中ブランコの花形ホリー(ベティ・ハットン)、そして新たに団員に加わった空中ブランコの大スター、グレート・セバスチャン(=コーネル・ワイルド)の3者を軸に物語は展開する。お話の中心は、この3人の三角関係。恋人なのになかなか正直にホリーに結婚を申し込むことが出来ないブラッド、そんなブラッドを嫉妬させるためにセバスチャンに気のある振りをするホリー。女たらしのセバスチャンは早速ホリーを口説きはじめる。そんな中、スターの座を張り合うセバスチャンとホリーが空中ブランコの勝負を行い、そこでセバスチャンが大けがをして。。。。

お話としては普通の三角関係の話だけど、とにかくサーカスの場面が豪華。延々と続く入場パレードとそこに登場するサーカス団の面々や、馬、象、ライオン、熊、犬などの動物たちだけで圧倒される。さらに空中ブランコなどは、3つのアリーナを使って同時に行うのだ。この規模の大きさは半端じゃない。セシル・B・デミルは、テレビの普及で斜陽になりつつある映画産業を復活させるために、映画ならではの大画面ときらびやかなショウを映像化した。さすが、ほぼアメリカ映画産業の成立と共にキャリアを積んできたデミルである。

脇役も素晴らしい。この映画には、様々な人たちが登場する。もっとも印象的なのは、決して人前では化粧を落とさない道化師のバトンズ(=ジェームズ・スチュアート)。実は彼は、殺人の罪で逃亡中の身だから人前に顔をさらすことが出来ない。警察にばれないようにこっそりとサーカスを見に来た母親に、ショウの一コマのようにさりげなく近づき、束の間会話を交わす場面に工夫を感じる。彼は元医師で、不治の病に倒れて苦しむ妻を見かねて安楽死させたのだ。この後も、バトンズはブラッドの親友として様々な忠告を行い、映画の最後では医師としての正体を明かして大けがをしたブラッドを救うことになる。こういうヒューマニズムあふれる脇役を演じさせたら、本当にジェームズ・スチュアートはうまい。良い役だと思う。

映画の最後は、様々な困難にも負けず、サーカス団が町の人びとを呼び込んで野外公演を始めるところで幕を閉じる。どのような困難があったのかは実際に映画を観てほしい。この最後の場面では、気づいたらホリーがブラッドに代わって団員を率いるリーダーとなり、彼女の大活躍によってくじけそうになっていた団員たちがサーカスの公演にこぎ着ける。極めてアメリカ的な展開であり、極めてアメリカ的なラスト。これがセシル・B・デミルという人がアメリカに愛される理由なんだろう。

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