ヘンリー・ハサウェイ監督「新・ガンヒルの決斗」

BSシネマで録画したままになっていたヘンリー・ハサウェイ監督「新・ガンヒルの決斗」を観る。1971年の作品。主演はグレゴリー・ペック。

ジョン・スタージェス監督の「ガンヒルの決斗」が面白かったから続編だと思って期待していたけれど、単に、グレゴリー・ペックが追う復讐の相手がガンヒルに住んでいるというだけで、登場人物も設定もオリジナルと何の関係もないお話でした。そこは少しがっかり。ウィキペディアによると、この作品は2年前にヘンリー・ハサウェイが監督した名作「勇気ある追跡」とほぼスタッフが同じとのこと。監督の頭の中ではむしろ「勇気ある追跡」のもう一つの物語を作りたかったのかもしれない。15歳の娘が7歳の少女に変わっているけれど、不器用なガンマンが少女と共に荒野を探索の旅に出るという基本設定は両作品に共通である。

オリジナルとの関係はともかく、やはりヘンリー・ハサウェイ監督の語り口は面白い。西部劇の舞台を借りているし、現実にガン・ファイトがあり、復讐があり、娼婦たちがたむろするバーがあり、ならず者との格闘があるんだけど、何かそこには西部劇とは別の要素が加えられているような気がする。「新・ガンヒルの決斗」で言えば、人が子供を通じて親になると言うテーマだろうか。

この映画は、銀行強盗した際に親友に裏切られて投獄されたグレゴリー・ペックが7年の刑期を終えて出所し、自分を裏切った相手の元に向かう話なんだけど、映画の主題は、むしろひょんなことから押しつけられた7歳の少女(もしかしたらグレゴリー・ペックは彼女の父親かもしれないが真相は分からない)と共に旅をすることにある。この2人のやりとりがとても愛おしい。グレゴリー・ペックという、好漢だけどどこか不器用な男が、おませな女の子の世話をし、徐々に心を通わせていく。取り立てて、大きなドラマが起きるというわけではないけれど、川で身体を洗ってやったり、ポニーを買ってやったり、パンケーキを焼いてやったりという細々したエピソードが微笑ましく、焚火の前で彼女を膝の上に抱いて座る姿や、野宿してコヨーテの声に怯えて女の子がグレゴリーペックの背にすがるようにして眠る場面などが愛おしい。

映画は、この2人を追う凶悪な3人組と1人の娼婦、そしてグレゴリーペックと少女が一夜の宿を借りる寡婦とその息子を巡って展開していく。何か特別な映像や演出があるわけではない、淡々とした物語なんだけど、一つ一つのエピソードが丁寧に作られていてたるみを感じさせない映画でした。古き良き時代の懐かしい西部劇。たぶん、それは西部劇というジャンルが終わりつつある70年代という時代の中で、手練れの製作チームがリラックスした雰囲気の中で、肩肘張らずに良質な作品を作り続けようとしていたことと関わりがあるのかもしれない。

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