バート・ケネディ監督「戦う幌馬車」

BSシネマで録画していたままになっていたバート・ケネディ監督の「戦う幌馬車」を見る。1967年の作品。ジョン・ウェインとカーク・ダグラスの2大スターが共演した西部劇。

僕はバート・ケネディ監督についてはまったく知らなかったけれど、なんとあのバット・ベティカー監督の「七人の無頼漢」の脚本家だったんですね。道理で、テンポの良い作品になっていると納得。しかも、バート・ケネディ監督は、1990年にクリント・イーストウッド監督「ホワイトハンター ブラックハート」の脚本も担っています。西部劇に深い愛情とリスペクトを表明しているイーストウッド監督が、呪われた50年代西部劇監督のレジェンドの一人にオマージュを捧げていたのか!まだまだ映画史は発見がありますね。

この映画の物語は、トウ・ジャクソン(=ジョン・ウェイン)が故郷の街に戻ってくることで幕を開けます。トウは、この土地で牧場を経営していたのですが、敷地内で金鉱が発見されたことがきっかけで町の有力者ピアースにはめられ、無実の罪で投獄されたのでした。トウが戻ってきたことを知ったピアースは流れ者のガンマン、ロマックス(=カーク・ダグラス)を雇ってトウを殺そうとしますが、ピアースは先手を打ってロマックスをある計画に巻き込みます。それは、ピアースが金鉱で採掘した砂金を銀行に輸送する装甲馬車を襲撃しようという途方もない計画でした。この馬車は、鉄板の装甲で覆われている上に強力な機関銃が取り付けられた要塞のような馬車で、しかも移動の際には10数名の護衛がつくという難攻不落のしろものです。果たして、この計画はうまくいくのか。ロマックスは、本当にトウに協力するつもりなのか。壮大な襲撃計画が始まりました。。。

言うまでもなく、この映画の最大の魅力は難攻不落と思われる馬車をいかに攻略するかにあります。トウは、ネイティブ・アメリカンのかつての仲間や、牢獄で知り合った爆発物の天才ビリー、そして老いた密輸商人ウェス・フレッチャーなどを仲間に入れて綿密な計画を立てていきます。でも、そこはバート・ケネディ監督。それぞれのメンバーは一癖も二癖もあって飽きさせません。ロマックスは女たらしで金に目がなく、もしもこの計画がうまくいかないと分かったらトウを殺して懸賞金をせしめようと企んでいます。爆発物の天才ビリーは、酒に弱いという欠点を抱えています。ウェス・フレッチャーも、手癖が悪くてすぐにものを盗む上に、若い妻のケイトの独占欲が強く、少しでも若い男が近づこうものならすぐにナイフを振り上げる男です。こういうユニークな人物造型と、彼らが織りなす感情の綾が、砂金強奪計画に深みを加えます。さらに、トウは、ネイティブ・アメリカンの一族を計画に巻き込みますが、これによって話しは益々混迷していきます。

結局、この映画は、荒唐無稽な方法で装甲馬車の襲撃に成功しますが、物語はそこでは終わりません。巧妙に砂金をカモフラージュして隠し場所に運ぼうとした時に思いがけない事故が起き、思いがけない人たちが砂金を手にすることになります。その結末は、ぜひ映画を実際に観て頂きたいと思いますが、バート・ケネディ監督は、マッチョなジョン・ウェインやカーク・ダグラスが闊歩し力と暴力が支配する西部劇に、ユーモアと少数者や女性に対する優しいまなざしを持ち込むことによってこのジャンルを豊かで魅力的なものにしようとしたのですね。その演出のあざやかさが印象的です。もちろん、西部劇本来のアクションも、早撃ち、爆破、ネイティブ・アメリカンの襲撃、メキシコの無法者との戦いなどなど、きっちりと魅せてくれますのでご安心を。

僕は、この映画を観て、バート・ケネディ監督が気に入りました。これは、傑作の誉れが高い「大列車強盗」もぜひ見てみなければ。。。

シェア!

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。