緒方明監督「死刑台のエレベーター」

緒方明監督「死刑台のエレベーター」を観る。2010年の作品。言うまでもなく、ルイ・マル監督の同名作品のリメイク。オリジナルは、ヌーベル・ヴァーグの先駆的作品として高く評価された。ジャズ好きには、マイルス・デーヴィスの即興演奏が全編に流れる映画としても記憶されている名作である。これをリメイクするというのは、なかなかできるものではない。

緒方明監督は、寡作だが良い作品を撮り続けている。「独立少年合唱団」で注目を集め、「いつか読書する日」では、成瀬巳喜男監督の「乱れる」にオマージュを捧げるラストで映画好きの心を奪った。「のんちゃんのり弁」でも、丁寧な人物描写と手堅い演出で魅せていた。作家性を強烈に押し出すタイプではないけれど、しみじみと市井の人の哀感を描ける監督だというのが僕の印象。だから、このリメイクも結構、期待して観た。

で、感想はというと、美しい映像が続き、時々はっとさせられる場面があるけれど、ドラマが持続しないな、というのが第一印象でした。なぜだろう?阿部寛も吉瀬美智子もそれなりに頑張っているし、津川雅彦、柄本明、笹野高史などの名優が脇を固めている。映像も、シャープだ。エレベーターの場面も美しい。でも、なんだか散漫で、これまでの緒方作品の緊張感が持続しないという印象を受けた。そもそも、個々のシーンが唐突で、全体がつながっていない。なぜだろう?製作委員会方式で角川映画配給というのが混乱の原因なんだろうか?脚本もトレンディドラマのノリで正直ついて行けなかった。せっかくの緒方監督作品なのに残念。。。

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