田中征爾監督「メランコリック」
たまには日本の若い監督の作品も観なければと思い立って、田中征爾監督「メランコリック」をレンタル。2019年公開作品。アップリンク配給のインディペンデント映画。東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞受賞、ウディネファーイースト映画祭新人監督作品賞受賞など、それなりに評価された作品。
映画の舞台は、場末の寂れた銭湯。東大を卒業したのにまともに就職せずにぶらぶらしている和彦は、この銭湯でアルバイトを始める。最初はただの時代がかった銭湯だと思っていたが、実はこの銭湯で働く他のアルバイト達はプロの殺し屋で、この銭湯で深夜、ターゲットを殺して火葬に付すという行為が繰り返されていたのだった。。。
この設定は面白いと思う。殺し屋のアルバイト松本を演じる磯崎義知のアクションや武闘シーンの切れもインディペンデント映画の域を超えている。さらにヤクザが話に絡んで何故この銭湯が殺し屋の仕事場になったのかが明らかになっていくところもそれなりに面白い。
ただ、主人公の演技は単調、セリフはこなれておらず、要所要所で決めることができない。さらに、せっかくここまで面白い状況設定をしておきながら、話のオチが、「モラトリアム東大生が冒険の果てにささやかな自分の居場所を見つけました、めでたしめでたし・・・。」となるところが今どきの日本映画なんですね。
まあ、昔から言われていることですが、今の日本映画は、底が抜けてしまっている作品が多すぎる。この作品の失敗が、監督の実力不足なのか、それともプロデューサー(主人公の和彦を演じている皆川暢二)の意向なのかはよく分かりませんが、こんな映画がまがりなりにも「国際」を冠した映画祭で受賞し、DVDが大手を通じてレンタルされるなんて、日本の映画界はやはりなにかが間違っていると感じました。