アート月評(2026年10月)

展覧会やアートフェスティバルの感想をSNSに投稿した記事をまとめました。

Tokyo Atlas 2026

久しぶりに好天の週末。せっかくなのでお台場で開催中の国際芸術祭へ。まだ見始めてばかりだけどなかなか充実しています。これが無料とは、やはり東京都はリッチですね。すでにインスタで盛り上がってると思いますが、草間彌生の巨大オブジェを共有しておきます。

草間彌生「ヤヨイちゃん」+「宇宙へ行って見た愛の花束」

ちなみにオススメは青海埠頭公園地下駐車場。要予約ですが、幻想的で神秘的なインスタレーションを楽しむことができます。地下の闇の中、ひととき宇宙や世界の始まりや神話的世界に浸りませんか?

続いて屋外インスタレーション。

青海エリアは「ヤギの目」が秀逸。動物のフンや野菜などをベースにした素材でオブジェを制作したり、社会福祉施設や学校でヤギを飼いながら、これをテーマにコミュニティとアート制作するプロジェクト。

実際にヤギさんが草を食んでいてスタッフとおっかけっこしている空間に作品が展示されてます。このほのぼの感、良いですね。癒されます。

お台場会場。目玉はもちろん草間彌生。

この作品は、まだ若くてそれほど知名度も高くなかった草間が、60年代にゲリラ的にベネチア・ビエンナーレに設置したインスタレーション。

その作品が半世紀以上を経て(と言っても草間の代表作の一つだから、ほぼ毎年、世界中のどこかで展示されてるはずだけど)、お台場に設置されて、インスタのネタになってるのは不思議な感じ。親子連れが、ボールに映る自分たちがすべてのボールに広がるのをワイワイ言いながら写真に収めようとしている。アート鑑賞というより、ピクニック気分。

でも、彼女はこの作品に自分の姿が無限に乱反射していく中で、離人症や幻聴に苦しむ自己を消滅させようとしたんだから、もしかしたら、天国の草間はこれこそ自分が期待した鑑賞法だとニコニコしながら見つめているかもしれない。

天王洲アイル会場へ。

建畠氏がキュレーターの会場だけど、場末感が半端じゃない。客のいない屋台がエントランスに並び、倉庫に入ると暗い空間にいかがわしい感じの舞台。狙ったのか、それとも他会場の2つの草間彌生インスタで予算を食われてしまったのか。。。

コンセプトのよく分からない展示でした。

気を取り直し関連企画をやってるWhat Museumへ。東京都が支援している若手アーチストのグループ展。こちらは見応えあり。

インターネットとかスマホとかデジタル映像が生まれた時から当たり前だった世代が、昔の民俗や道具や神話や歴史に興味を持って制作した作品。あるいは、漫画的手法で哲学的思索を展開したり、ひりつくような感情をそのまま2次元の絵画に表現した作品。

一時流行った芸術起業家達の軽薄な「クールジャパンなコンテンツ」(嫌な言葉!)とは深みもクオリティも技法も格段に異なる作品を見て元気をもらいました。

ソウゾウ・トレイニング@渋谷公園通りギャラリー

渋谷公園通りギャラリーは、アール・ブリュットを中心に企画展を開催しているお気に入りのギャラリー。今回は、恒例のアール・ブリュット2026巡回展。

アール・ブリュットと聞くと、身体や精神に障害を持つ人の変なアートというイメージを持つ人がまだ多いかもしれないけれど、そういった思い込みを捨てて素直に作品に向き合うと、描く喜びにあふれていることに深く心を動かされる。たぶんそれは、プロのアーチストの作品ではなかなか出会えない感動だと思う。

今回も、素敵な作品に出会えた。

上半身麻痺のために足の指で描き続ける森陽香さんの作品は、鮮やかな色彩と奔放な形態で不思議な生物を描いていて楽しい。

70歳を過ぎてから制作を本格的にはじめた田口Bossさんの作品は、不定型で有機的なオブジェと、その中に細かく書き込まれた細胞とも生体組織とも見える形態が見るものを圧倒する。でもその感触は、不気味というより生のなまめかしさや蠢き。そこにはリズム感さえ感じられる。

日々の暮らしの中で制作を続ける香川大介さんの作品は、無意識に筆を動かしながら大作を作り上げる。でも描き終わったら、どこか全体がつながった感覚があると言う。確かに、不思議な形態と色彩にあふれた画面の前に立つと、何かが深い闇から立ち上がってくる感覚がある。それはどこかで私の無意識とつながっているかもしれない何かだ。

無料で公開しているので、渋谷に行く機会があればぜひ立ち寄ってほしい展覧会。

「ミロとタピエスー戦後スペインの渦 1945-1980」展@町田市立国際版画美術館

ミロとタピエス。二人とも、気になる抽象画家で、スペイン、というよりもカタルニアを代表するアーチスト。この二人の作品をまとめてみることができる貴重な機会なので、町田市国際版画美術館に駆けつける。

ミロは、自由奔放だけどミロの世界としか言いようのない独自の色彩と形態を追っていくだけで楽しい。でも、実はあの抽象的な世界の背後には、フランコ独裁体制に対する強い怒りがあるし、またそれぞれの形態には独自の記号世界がある。解説を読みながら、改めて「囚われの女」を観ると、違った印象が感じられる。

ジョアン・ミロ(1969)囚われの女

タピエスは言うまでもなく「アンフォルメル」の提唱者のひとり。カンディンスキーが切り拓いた抽象画は、その後アメリカに渡って、抽象表現主義や新造形主義に進化していくけれど、個人的には、「アンフォルメル」が追求した素材感やマチエールの追求の方が好きだ。作品が持つ手触り感や、あるスタイルにとらわれない流動性や無方向感に心が惹かれる。今回は版画だけど、それでもタピエスの不定型な世界を満喫できる。

アントニ・タピエス(1976)手稿

今回は、無料の常設展なので小規模だったけど、どこかで回顧展を開催してほしい。まあ、バルセロナのアントニ・タピエス美術館に行けばいいんだけど。。。

「瀧本幹也 Lumination 朔望ー海から天体を読む」@茅ヶ崎市美術館

星と宇宙に魅せられた写真家が描く神秘の世界。

星、月、あるいは宇宙船を捉えた写真が美しいのは言うまでもない。

さらに、太陽から地球に光が届くまでの8分20秒や、月から地球に光が届くまでの1.3秒を露光時間にした夜の海や世界を撮影した作品から感じられる神秘。

あるいは、空中撮影によって捉えられた地球の大地や、辺境の地で出会った人々の正面からのポートレートがもつ静謐さ。

コロナ禍で外出制限がかかったときに撮りためた、ごく普通の草花の美しさ。そして、人気のない寺院の静謐。

ただ美しいだけでなく、宇宙や生命について深く考えさせられる素敵な展覧会でした。

残念ながら、展覧会場での写真撮影は禁止だったので作品を紹介することができませんが、作品は作家のHPで観ることができます。写真集が欲しい!

その他の展覧会

なお、ブログに記事として掲載した展覧会もあるので、良かったらそちらもご覧下さい。

「テート美術館 ターナー展ーー崇高の絵画、現代美術との対話」

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